Interview
2019.12.04

街に寄り添い、街の人々と繋がる場に。
UDSとブルーノート・ジャパンが目指す「HAMACHO HOTEL」のビジョンとは。

街に寄り添い、街の人々と繋がる場に。
UDSとブルーノート・ジャパンが目指す「HAMACHO HOTEL」のビジョンとは。

住宅が増加し"生活する街"の様相を強めながらも、街に根差す文化や歴史、老舗が生み出す風情が香る街・日本橋浜町。この地に、街のシンボルとなる新たなホテル「HAMACHO HOTEL」が誕生したのは、2019年2月のこと。ホテルの企画とインテリアデザイン、運営を行うのは、各地でまちづくりに繋がる宿泊施設、商業施設、公共施設などを手がけるUDS株式会社です。「HAMACHO HOTEL」は街に暮らす人々との間にどのような調和を生み出そうとしているのでしょうか。UDS株式会社ホテルマネジメント事業部HAMACHO HOTEL支配人の前田健吾さん、そしてメインダイニング「SESSiON」を運営する株式会社ブルーノート・ジャパンの山本貴之さんにお話を伺いました。

それぞれのアプローチで“街との調和”を目指してきた両社

―まずは、UDSの事業内容についてご紹介ください。

UDS前田健吾さん(以下:前田):UDSはまちづくりに関わる事業企画や施設の設計、運営まで行っている会社です。施設などの企画・設計を専門に行う会社は世の中にたくさんありますが、運営まで行う会社は珍しいのではないでしょうか。「HAMACHO HOTEL」でも、設計だけでなく企画の部分から参画させていただき、運営まで行っています。そのため、企画・設計段階の想いが運営面にも反映され、お客様や運営スタッフの声がまた次の企画・設計に活かされるという好循環を生み出しています。「MUJI HOTEL GINZA」(東京)や「the rescape」(沖縄)などのホテルをはじめ、コワーキングスペース、公共施設、商業施設、住宅などグループ全体で国内外64拠点を手掛けています。

―企画・設計段階から運営までをワンストップで手掛ける背景には、どのような思いがあるのでしょうか。

前田:私たちは企業ミッションとして“新しい価値を生み出す選択肢を提案し、その未来まで責任を持つ”ということを掲げています。斬新で話題性のある施設、つまりハードの部分を企画・設計して終わるのではなく、そのあとの運営というソフトの部分まで入って、継続してつくりあげていくことが、わたしたちUDSが掲げる「まちづくり」には欠かせない重要なポイントであると考えています。

また、業態にこだわらず、“その街に必要なものは何か”、“どうすれば街の魅力が高まるか”を考えているのも私たちの特徴です。結果、様々な価値を組み合わせて複合化させる企画も多いです。「HAMACHO HOTEL」もホテル、レストラン、チョコレートショップを組み合わせた複合施設として企画されています。

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HAMACHO HOTEL支配人の前田健吾さん

―そのレストラン部分を手がけるのがブルーノートさんなんですね。ブルーノートのビジネスについてもご紹介ください。

ブルーノート・ジャパン山本貴之さん(以下:山本):ブルーノート・ジャパンはエンターテインメント事業、飲食店事業、ブライダル事業と大きく3つの柱をもってビジネスをしています。エンターテインメント事業はご存知の方も多いと思いますが、南青山のジャズクラブ「BLUE NOTE TOKYO」の運営をはじめとしたライブやイベントの企画・運営、飲食店事業は直営店6店舗を中心にしたカフェやレストランの展開、ブライダル事業では保有店舗を活用したブライダルを手掛けています。

―いずれの事業でも“人々が集まる場所を生み出す”という点が共通していると思いますが、店舗づくりでどのような点を意識していますか?

山本:私たちのビジョンに“そこにいたい”というキーワードがあるのですが、どこに出店する場合でも、“この場所にいたい”、“ここで時間を共有したい”と思ってもらえるような空間づくりを意識していますね。そのため“街に寄り添っていく”という意識は強く、UDSさんの姿勢と通じる部分も多いと思います。人と音楽と食が繋がりそこにコミュニティが生まれる、そんな場づくりをしたいですね。

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ブルーノート・ジャパンの山本貴之さん

浜町は“日本橋のブルックリン”。下町感の残る街での、人との繋がり。

―日本橋浜町の魅力や、手掛けているビジネスとの親和性について、教えていただけますか?

前田:このプロジェクトに参画させていただいたのは、浜町で街づくりを推進されている安田不動産さんにお声がけ頂いたのがきっかけでした。浜町エリアの魅力としては、まずは立地があると思います。東京駅から2キロという距離で、地下鉄も3駅4路線が使用でき、さらに箱崎の東京シティエアターミナルにも近い。世の中のイメージ以上にアクセスがいいのです。そのような立地であるにも関わらず、浜町エリアはまだ「手付かず」の場所も多い。街としてのポテンシャルが高いので、もっと評価されてほしいと思っています。

加えて、下町感が残っていて暮らしている方々との距離感が心地いいというのも浜町の特色のひとつです。下町というと観光地化が進む浅草などを思い浮かべますが、そことは違う良さが浜町にはあると思います。 “暮らす人々の日常が感じられる下町”という感じでしょうか。こういった街は今後、訪日外国人観光客からも人気が高まっていくと思いますし、非常に高いポテンシャルを感じますよね。

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近代的な建物と古くから息づく江戸の風情が交差する日本橋浜町 photo:ナカサアンドパートナーズ

山本:私たちも安田不動産さんから「HAMACHO HOTELに出店してみないか」とお誘いがあったことがきっかけだったのですが、実はそれまで、この浜町という街を知らなかったんです。だけど、出店を検討するにあたって何度も街を歩いてみると、人の繋がり・コミュニティが強い素敵な街だなと。ブルーノート・ジャパンも人の繋がりを非常に大切にする会社なので、親和性を強く感じたことを覚えています。

また、街の持っている雰囲気も気に入っていますね。日本橋全体をニューヨークのようにたとえてみると、オフィスビルや商業施設が並ぶ日本橋・室町等の西側エリアはマンハッタン、東側の浜町はブルックリンのような雰囲気なのではないかと。ブルーノート・ジャパンはもともと“これから話題になる街”に出店するのが好きな会社なので、そういう観点からも浜町はぴったりなのではないかと考えました。

―その浜町という街と関わるうえで、 「HAMACHO HOTEL」が大事にされたい姿勢などはありますか?

前田:お客様を迎え入れるだけではなく、私たちのほうから街に出ていくという姿勢でいたいと考えています。具体的に実現できていることはまだ多くはないですが、地域のイベントに参加するのはもちろん、将来的には「HAMACHO HOTEL」の手掛けるイベントをホテルの中ではなく、街の中で展開していくということにもチャレンジしたいですね。

浜町は、企業や店舗、人の関わり合いが強い街なので、多くの人々を巻き込むことでさらに活性化させていけるのではないかと思っています。そうした活動に挑戦するためにも、“最近浜町にやってきたどこかの企業さん”というイメージを払拭して、早く “浜町の一員”になりたいですね。 “みんなでやっている”という雰囲気を醸成していくことは街づくりにおいて非常に重要ですし、この浜町ではより大きな力を生んでいくと感じています。

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5月には、前田さん自身がお祭りに参加して神輿を担いだ photo:編集部

―「SESSiON」では街との繋がりをどう考えていますか?

山本:オープン当初から “ブルーノート・ジャパンらしさを維持しながら、この街に合った料理を出していこう”というスタンスを重視してきました。

実はこの「SESSiON」には常連のお客様がたくさんいらっしゃって、そうしたお客様から店舗についてのご意見をたくさんいただくようにしているんです。そしてそのご意見をもとに、「どうしたらお客様に喜んでいただけるか?」をスタッフみんなで考え、実際にメニューや運営に積極的に取り入れていく。こうしたサイクルを持つことで店舗のオリジナリティを生み出すよう心掛けています。こうやって、料理人やバーテンダー、スタッフ、お客様が“セッション”しながら、お店をより良くしていきたいと考えています。「セッション」という言葉にはワクワクする、心躍るようなイメージがあると思いますので、自由な発想で色々なセッションを生み出せていければいいですね。

HAMACHO HOTELが抱く“ものづくり”へのこだわり

―「HAMACHO HOTEL」は日本橋が培ってきたものづくり文化、クラフトマンシップに強くインスパイアされているようにお見受けします。

前田:浜町の街づくりコンセプトが“「手しごと」と「緑」のみえる街”なのです。地域に根差す施設づくりにおいては、歴史や文化といった、その土地の背景を理解することが大事だと考えています。例えば、このあたりのエリアはかつて芝居や浄瑠璃といった演芸が盛んで、多くの職人さんが住んでいた街。そうしたバックボーンを踏まえて、手しごとというコンセプトを大切にしたいと考えました。そして、日本の手しごとの良さを浜町から世界に発信するために、「HAMACHO HOTEL」ではどんなことができるか?という軸で、展開し得る様々な企画を考えました。

例えば、「TOKYO CRAFT ROOM」はこうした考えを体現したシンボリックな企画のひとつです。このプロジェクトでは、日本の作り手と国内外のデザイナーをマッチングし、日本のものづくりの技を活用した新たなアイテムを生み出しています。そして「HAMACHO HOTEL」の1室である「TOKYO CRAFT ROOM」で、そのアイテムを実際に使用できるようにしています。ちなみに、第一弾として制作されたマグカップは、他のすべての客室にも設置しています。手しごとの良さは、ただ見てもらうだけではなく、実際に体験してもらい味わっていただくことが大事だと考えています。

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HAMACHO HOTELの「TOKYO CRAFT ROOM」photo:ナカサアンドパートナーズ

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「TOKYO CRAFT ROOM」で制作されたマグカップとホテルオリジナルのレザークラフト

シームレスな空間が、様々な交流を生み出す

―HAMACHO HOTEL、SESSiONでそれぞれ注目して欲しいポイントについて教えてください。

前田:支配人としてはやはりサービスです。実は「HAMACHO HOTEL」ではホテル経験者を積極的には採用していないんです。未経験者も多く採用することで、固定概念にとらわれることなく、従来のホテルにはない斬新なアイデアを生み出すことができると思っています。理想としているサービスの在り方は「フレンドリー&ポライト(丁寧さの中にフレンドリーな関係性を生み出すこと)」。どちらかというとフレンドリーを重視して、気軽に話しかけられるような雰囲気を目指していきたいので、そんな点も楽しんでいただけたら嬉しいです。

もちろん空間も注目いただきたいです。客室は、“ホームメイド”、“日本”、“モダニズム”をデザインキーワードに170室をご用意しています。また、バルコニーにも緑を多く取り入れて親しみやすい雰囲気を作っています。一度宿泊していただければ居心地の良さを体感していただけるのではないかと思います。

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手しごとを細部に取り入れ、バルコニーの緑も感じることができる客室  photo:ナカサアンドパートナーズ

ロビーフロアについては、「SESSiON」からフロントまでをシームレスなデザインにしているのが特徴で、開放的な雰囲気を生み出しています。区切りを設けて店舗を展開するのではなく、シームレスな作りにすることでそこに様々な交流を生み出したいと考えています。

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SESSiONからフロントまでシームレスにつながるロビーフロア

山本:一般的に、ホテルにテナントとして入るお店は、壁で仕切られてしまっていることが多いですよね。しかしそのせいで、ホテルと店舗が全く別世界のようになってしまうこともある。このホテルでは、空間が一体感のあるデザインになったことで、外国人の宿泊客と地元の人が同じカウンターに並んでお酒を飲むといった、様々な交流が生まれているんです。

また、当店として注目して欲しいのはやはりライブイベントですね。店内に入れているスピーカーは「BLUE NOTE TOKYO」をはじめ系列店舗で使用しているものと同型のものを入れていますし、天井もとても高いので、店内の音の響きも非常に良いんです。ライブは宿泊者の方と地元の方が交流できる場でもあるし、音楽に触れてもらえる機会にもなっています。街のお店で美味しい料理を楽しんでいただき、そのあと「SESSiON」でライブを観ながらお酒を楽しむ。そんな形でも是非ご利用いただきたいですね。

地元に人に寄り添いながらチャレンジを続ける

―最後に、これから日本橋浜町の中でどのような存在を目指したいか、どのようなことにチャレンジしたいかを教えてください。

前田:日本橋浜町の発展に寄与したいという思いがもちろんありますし、ゆくゆくは「浜町といえばHAMACHO HOTELだよね」と言われれば最高ですね。そのためには、ホテルの中でサービスを提供するだけではなく、どんどん外に出ていきたい。宿泊ゲストに街の魅力を案内して、そこで地域の皆さんや地元店舗の方々を巻き込みながら色々な交流を生み出していければと考えています。それによって浜町エリアがもっと盛り上がり、隣接する日本橋の他エリアとの一体感も生み出していきたいですね。もちろん、UDSだけではできることに限界があるので、様々な企業や街のみなさんと一緒に手掛けていければと考えています。

できることからチャレンジを続けていき、10年後に浜町に暮らす皆さんから「HAMACHO HOTELができてから、街が変わって良くなったよね」と言っていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。

山本:私たちも、「この街にSESSiONができて街が楽しくなったよね」「HAMACHO HOTELに来たらSESSiONがあるよね」と言っていただけたら嬉しいですね。そのためには「SESSiON」の軸である音楽も活かしながら、常に“発信する場所”であり続けることが大事だと思います。グループの他店舗では料理教室やワインの試飲会などのイベントもやっているので、そういった経験もいかしながら、どんな発信をしていけば街に暮らす皆様に喜んでいただけるかを考えていきたいですね。色々な可能性があると思いますので、前田さんとも話し合いながらどんどんチャレンジしていきたいと思います。

このエリアは年配の方も多いのですが、みなさんとてもお元気でいらっしゃいます。そうした皆さんにもたくさん音楽を楽しんでいただき、“音楽通”なおじいちゃん、おばあちゃんがたくさん生まれたら楽しいと思いますね。また、日本橋浜町は古くから明治座をはじめとした芸能文化が根付く街。こうした風土は、ライブに出演するアーティストを育ててくれる、という側面ももっていると思っています。お客様とアーティストがともに学びあうような素敵な場が創れたらと思いますね。

ちなみに、浜町の盆踊り大会にも参加させてもらったのですが、あそこまで盛り上がる盆踊りは最近ではなかなか見かけませんね。地元の人が持つパワーと「SESSiON」がいい形でコラボレーションできたらいいなと思っています。ブルーノート・ジャパンでは音楽フェスなどを手掛けることもあるので、いつか浜町の人たちと一緒に盛り上がれたらいいですね。

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取材・文:井口裕右  撮影:岡村大輔

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