Interview
2019.2.8

オープンなオフィスが出会いの交差点に。
多国籍クリエイター集団 Konel、クリエイティブの源泉。

クリエイティブカンパニー“Konel(コネル)”のビルは、問屋が軒を連ねる街、日本橋馬喰町にあります。この場所にオフィスを移したのは 2016 年。なぜ彼らはこの歴史ある街に拠点を構えたのか、どんな未来を描いているのか。プロデューサーで代表の出村光世さん・テクニカルディレクターの荻野靖洋さん・クリエイティブテクノロジストの Kenji Jonse さんに話を伺いました。

コンサルティング業界からクリエイティブ業界へ。
感性で勝負する“右脳仕事”に求めるものとは。

―Konelは普段、どういったプロジェクトに関わられているのですか?

出村:Konelは2011年に設立した、デザインとテクノロジーの会社です。アート、プロダクト、広告など領域を限定せずにクリエイティブ制作をしています。

荻野:クライアントワークと自社発信のプロジェクトの2つを軸に、今まで世の中になかった体験作りに取り組んでいます。クライアントワークでは、Amazon初の飲食店舗「Amazon BAR」のプロデュースや、ワールドカップを盛り上げるAIロボット「AIカビラくん」の開発を担当しました。また直近では、自社発信プロジェクトとして人間の脳波から自動作曲を行う機械「NO-ON」を社内外のクリエイターと共同開発し、音楽とテクノロジーの祭典 MUTEK JP2018に出展しました。

人工知能でサッカーの試合予想や質問に答えてくれる「AI カビラくん」

出村:「Amazon BAR」は、Amazonが世界最大級・約14万種類のお酒の取り扱いがあることを多くの人に知ってもらうため、何千種類ものお酒が並ぶ BARを10日間限定で銀座にオープンした企画。その総合プロデュースを広告代理店や制作会社と一緒に行いました。質問にタッチパネルで答えると今の気分に合ったお酒がレコメンドされるというこれまでにない体験ができ、壮大な空間づくりにもこだわったことで、メディアで話題化することができました。

Amazonならではの豊富なお酒の品ぞろえをリアルな空間で表現した「Amazon BAR」

―独創的なプロジェクトがたくさんありますね。元々どういった経緯でKonelを設立したのですか?

出村:2011年にKonelを創業したとき、私はアクセンチュアというコンサルティング企業に勤めていました。郵政や防衛、放送といった規模の大きい案件を担当し論理的に考え抜く“左脳メイン”な仕事ばかりしていたんです。その反動もあって、”右脳メイン”の仕事に飛び込んでみたくなって。
小学生のころ発明クラブに入っていて、想像力で0から1を生み出すのがすごく面白かったんですよね。その感覚が強く思い出されて、右脳をたっぷり使って感性で勝負する仕事にシフトしたいと思ったんです。そこで、大学時代のバンド仲間でフリーランス WEBクリエイターだった荻野と、同じく大学時代から音楽イベントを共催していた映像クリエイターの宮田に声をかけ、それぞれが兼業しながら会社を創業しました。

―創業時はみなさん兼業をされていたんですね。いつごろ専業へと移行していったんですか?

出村:創業後にアクセンチュアを卒業し、Konelに専念するつもりだったのですが、世の中を動かすダイナミックなことをするためにも、クリエイティブ業界の構造を俯瞰で捉える必要があるのではないかと考えたんです。ネットワークを作って成長スピードを高める必要がありそうだなと。
そこで再び兼業のまま広告代理店の東急エージェンシーに就職しました。プロデューサーとして様々な企画に携わりながら、業界での経験を積んでいきました。
そして2016年にKonelへ軸足を移したんです。

偶然の出会いから集まった仲間。
多様な国籍・働き方を受入れる、しなやかな組織に。

―Konelの特徴のひとつに、メンバーの国籍の幅広さがありますね。

荻野:Konelのメンバーの国籍は日本、アメリカ、ベトナム、韓国、台湾、ドイツと、かなり多様です。職種についてもデザイナー、エンジニア、コピーライター、プランナー、ディレクター、プロデューサーと様々です。

Jones:僕はもともとアメリカで美大に通いながら車をカスタムしたり、オリジナルプロダクトをつくっていました。Konelではクリエイティブテクノロジストとして、3Dモデリング、レーザー加工、溶接などデジタルとアナログをつなぐ制作をしています。

出村:Jonesのお陰でグラフィックやWEBのクリエイターだけではできないハードウェアの領域が一気にひろがりました。

Jones:日本へ来た時にネットの掲示板でバンド仲間を捜していて、偶然 Konelが運営するギャラリー「馬喰町 FACTORY」のメンバー募集の広告を見たんです。気になって連絡してみたら、僕の活動や作品にとても興味をもってくれて、結果としてテクノロジストとしてKonelに参画することになりました。

―バンド仲間を探していたら、仕事仲間を見つけてしまったんですね(笑)。こういった偶然性が、多様性のある組織の在り方にもつながっている気がしますね。

荻野:そうですね。Konelは国籍だけではなく働き方も様々です。正社員、フリーランス、インターンシップ、大企業に勤めながらのパラレルワーカーなど、多様な働き方のメンバーが、それぞれ希望する形で働いています。

出村:なかでもYahoo! JAPANに勤めながらパラレルワークをしているプランナーとの出会いはとても印象的でした。Konelが採用広告を出していた当時、彼が参加していたクリエイティブチームがたまたま同じ“coneru”という名前で。シンパシーを感じて連絡をくれた結果、意気投合し、すぐに参画してもらうことになりました。

―その方は二つの仕事をどのように両立されているのでしょうか?

出村:彼はプランニング、デザイン、ディレクションと幅広いスキルを持っています。Konelのプロジェクトに彼が入ることもあれば、逆に、彼がプロジェクトを持ち込んでKonelのメンバーをまとめながら制作を進めることもあります。

荻野:大企業に勤めながらフリーランスとして活動する方も多くいますが、そのような活動の仕方のデメリットは、リソースが限られること。スキルがあるのにスケールの大きな仕事を請けるのが難しい。彼はKonelにリソースとしての価値を感じてくれているのだと思います。

出村:Konelでは、いろいろなフリーランスメンバーがチャンスを持ち込んで仕事をしています。雇用する・雇用されるという関係ではなく、お互いがKonelという器を活用しているこの状態はとてもフェアだし、良いコラボレーションを生む環境だと感じています。

独創性あふれるチームをまとめる秘訣は週に2日の“まかない”にある?

―それだけいろいろな国籍・働き方をする人がいると、組織づくりは大変そうですね。

出村:そうですね。そこは正直、苦労していました。なんとかその課題感を打破するため、ある時ヴィジョンをつくることにしたんです。仲の良いメンバーで創業した時代は、明確にヴィジョンを言葉にしなくても息が合っていた。けど、Jonesのように新しく出会って仲間になるメンバーが増えると、それをきちんと言語化する必要が出てきたんです。日本語と英語の両方で。

荻野:そして生まれたのが“欲望を形に。/ Shaping desire.”という言葉でした。
クライアントワークも自社発信のプロジェクトも、自分たちが本当に欲しいと 思えるものだけを提供し続けたい。本音を交わさずにアウトプットする仕事は やめよう、という価値基準が明確になりました。
そのおかげで、意見がぶつかることもありますが、単発感のある仕事は減って、 長期目線で取り組めるプロジェクトが増えてきたように思います。

―その他に、チームのコミュニケーションのために日頃から行っていることは ありますか?

出村:毎週月曜日はごはんの日、木曜日はパンの日と決めて、昼にみんなでごはんを食べています。月曜のごはんはオフィスで炊いて、おかずは私が最低一品作 って振る舞います。月曜というのがポイントで、日曜に料理を仕込めるんです よ。完全に僕の都合ですね(笑)。

―食事の時間をつくってコミュニケーションをとる、素敵な習慣ですね。

出村:ありがとうございます。私たちは、新しいものを生み出すには雑談の時間が大切だと思っています。みんなつくることが大好きなので、放っておくと制作作業に没頭してしまいますが、それだけだと想像以上のものは創れない。目的のない雑談ができる時間を増やす必要があると思うんです。

荻野:理想のチームづくりには課題が多いですが、生産性と独創性のあふれるチームをデザインするために、日々実験を重ねていくのは楽しいですよ。

予想外のコラボレーションを生む、
出会いの交差点としてのオフィス。

―シェアオフィスなども増えどこでも働ける時代に、なぜKonelはオフィスという場所を持とうと思ったのですか?

出村:ひとつ大きいのは、場所があると物理的なものを形にしやすいということ。最近、自社プロジェクトとして「NO-ON」という脳波で作曲できるインタラクティブアートを開発・発表しましたが、大きさがだいたい3 m³ほどあるので、アトリエスペースがなければ実現できなかったと思います。

脳波で作曲できる「NO-ON」

Jones:僕がアートワークに専念できるのも自由に使える場所があるからこそです。本当はもっと広い場所が欲しいとリクエストしていますが(笑)。

出村:場所があるからこそ、人と人との出会いやコラボレーションが生まれやすいと実感しています。Konelはオフィス自体をシェアスペースとして色々なクリエイターに開いています。
以前、広告代理店のプランナーが「こんなAIロボットつくりたいんだけど」という相談を持ち込んで来たことがありました。非常に複雑な内容で、実現は難しいかなと思っていたのですが、たまたまオフィスにいたサンフランシスコのエンジニアに相談してみたところ「できる!」という返答があって。それで生まれたのが先ほどご紹介した「AI カビラくん」なんです。

荻野:自分たちのオフィスが多種多様な人の交差点になっていることで、いろんなコラボレーションが起きて、想像以上のことが起きやすくなっています。

内見1軒目、15分で物件を即決。
生活が隣り合う街でクリエイティブが生まれる理由。

―その“場”が、この3階建てのビルなんですね。

出村:そうなんです。実はこの物件、引越し先を探し始めて最初に内見した物件 で、即日申し込みを決めたんです。その日に決めるつもりは全くなかったんですが、荻野と15分ほど周辺を散歩したあと、ここに決めると大家さんに伝えました。

荻野:散歩をしてみると、ものづくりの会社や専門問屋、ギャラリーが多いとこに気づきました。川が近く下町の飲み屋もたくさんあって、ほどよい生活感がありましたね。歴史や文化の手触りがそこかしこに感じられ、クリエイティビティが刺激されそうな雰囲気と、居心地のよさがこの街にはありました。

出村:それまでは恵比寿のシェアオフィスを拠点にしていました。東京の西側は最先端なものや情報がひしめき合っていて、日本全体から考えるとかなり異質なゾーンだと思います。そんな街から出ない生活をしていると、いわゆる「普通」という感覚が鈍ってしまうんじゃないかなと感じたんです。
コミュニケーションの仕事では、「普通」の感覚をもっていることがとても大切で、これを失うとプランナーのエゴだらけの妄想企画ができてしまう。馬喰町は生活と隣り合っていて一般的な感覚がある街。クリエイティブの場としては最適だと感じています。

荻野:16時には下校する小学生が見えて、18時にはごはんが炊けるにおいがする。生活のリズムを感じられる街だからこそ、リアリティのある企画や制作ができると思っています。

Jones:実際に働いてみるとプロダクト系のクリエイティブには最適な場所だと思いますよ。秋葉原が近いことも魅力的です。部品がないときは歩いて秋葉原に行けます。この周辺は電子工学系のスタートアップ企業もたくさんあり、刺激的ですごくワクワクします。

街という視点で課題をとらえる楽しさ。
クリエイティブなアイディアで、課題を解決したい。

—街の人との関わりはありますか??

出村:ことあるごとに街づくり系の企画に参加したいと言っていまして、そのようにしていると雑談から仕事や企画が生まれたりします。

―実際にはどんな形で仕事になったのですか?

出村:馬喰町にある現在建て替え中のホテルのオーナーの方と知り合いになりました。そのホテルがフルリニューアルすることになり、サイト制作やシステムデザインなどのブランディングに関わることになったんです。オーナーさんは僕たちのことを、愛嬌をこめて「隣人」と呼んでくださっています。受発注の関係ではない、とてもいい空気の中で協創させていただいています。

—クリエイターの視点で、馬喰町で実現してみたい街づくりのアイディアはありますか?

出村:会社の横を流れる神田川で何かできそうな気がしますね。働き方のデザインを考えた時、移動のスタイルも重要な要素。移動手段を快適にしたり、刺激の材料に変えるだけで生産性が一気に高まると思います。例えば、移動手段をもっと増やせたらいいですね。日本橋には今は使っていない船着き場が多いので、船やジェットスキーでの通勤ができるかもしれない。

Jones:馬喰町周辺だけジェットスキーの免許取得率がなぜか高くなったりして(笑)。

荻野:あと、坂が少ない街なので自転車移動をしやすいはずなのに、駐輪場が足りていない。駐車場にするには狭いけれども使われてないスペースを駐輪場にしてもいいですね。自転車というモビリティはもっとクリエイティブになりそうな気がします

出村:街という視点から課題を考えるのはすごく楽しいし、アイディアで解決できることも多そうなので、これからも積極的に地域と関わっていきたいですね。

取材:坂本彩・佐々木大輔 文:安井一郎 撮影:佐藤達哉

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